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イタリアより「響き」のピアニスト ダヴィデ・サントルソラ を迎えた、低音王 藤原清登 のヨーロッパ・テイストあふれる新境地。
ひとつひとつのピアノの響き。それに呼応する深いベースのピチカート。ここには極力音数をおさえた空間と響きの官能的な美しさがあります。
レオンカヴァルロの(1)ではキース・ジャレットのように磨かれたピアノの響きに藤原のベースが静かに答えます。意外な選曲の(4)はまさにイタリア・テイスト。そしてスタンダードの(5)(6)は究極の美音がかなでるリラクゼーションの極み。
【演奏曲目について】
「マッティナータ(朝の歌)」はクラシックの作曲家レオンカヴァルロの作品。通常朗々と歌われる歌曲だが意表をついてしずかに一音一音を慈しむように演奏される。イタリアでの朗々たる演奏になれたダヴィデは当初藤原のこのアレンジのアイデアに違和感があったそうだが演奏を重ねるうちに完全に納得したという。
「イゾラ・ディ・ゴルゴンゾーラ(ゴルゴンゾーラ島)」は今回初登場の藤原のオリジナル。アルバム「アランフェス協奏曲」で発表した「ペル・ノイ」に通じる曲だ。サビのメロディーのなんと切なくも美しいこと。
「レイン」は藤原のペンによる代表作とも言える曲。他社アルバム、キングレコードでのファースト・アルバム「モダン・ベース」等、何枚かのアルバムで演奏されている。今回はピアノの響きをいかしてデュオで収録した。興味のある方は以前の演奏と聴き比べてみると面白いと思う。
「カンバセーション・ピース」はイタリアのフランコ・マンニーノの作曲。巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「家族の肖像」のテーマ曲である。短いながら印象にのこるトラックでアルバム全体のインター・ミッション的な役割を果たしている。
「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」はミシェル・ルグランの、「アイヴ・ゴット・イット・バッド」はデューク・エリントンの作曲によるジャズ・スタンダード。特に後者はアルバム「アランフェス協奏曲」の冒頭でもベースの弓弾きのメロディーで印象的に演奏している。チャールズ・ミンガスがモンタレー・ジャズ・フェスティバルのライブ盤で静かなピチカートで聴衆を圧倒した名演もあり、ベーシストにとっては思い入れのある曲。
ここで演奏者によるオリジナル曲を2曲。
「アンコール」はデヴィデ・サントルソラの曲。作曲者のオリジナルのイメージにはドラムをいれたトリオ編成があったようだが、ここはあえて色を変えるためにデュオで演奏されている。
続く藤原の「ヴァイブス」は前述の「アランフェス協奏曲」でも演奏されているブルース曲。前回はミンガスへのトリビュートということもあり激しい演奏だったが今回はミデアムのブルースのベース・ラインをたっぷりとたのしんでもらうためテンポをぐっと落としている。
そして今回のアルバムの大曲、チック・コリア作曲の「ラ・フィエスタ」へと続く。冒頭「アランフェス協奏曲」を思わせるベース・ソロ(ちなみにチック・コリアはこの曲ではなく、やはり彼の作曲による「スペイン」でベースのスタンリー・クラークにアランフェスを引用したイントロを演奏させている。)につづきアルコ(弓弾き)でベースがテーマをとる。じょじょに盛り上がってきたところで3拍子のピアノのセカンド・テーマからベースのソロへと突入する。ベース・ソロ後ふたたびセカンド・テーマに入るところとピアノのソロの後のセカンド・テーマへの導入部でピアノはベーゼンドルファーの最低音のBを鳴らしているのもオーディオ的に面白いと思う。
アルバムの最後はキース・ジャレットの「ソーサリー」。
激しいベースのオスティナートに導かれて繰り広げられるソロの応酬。ここでいままでサポートに徹していた福家俊介のドラム・ソロがフィーチャーされる。一聴して自然ではあるがよく聴くと不思議なノリのドラム・ソロではないだろうか。ここまで来て、今度はこのドラマーの演奏だけに集中するためにもう一度アルバムを最初から聴いてみると新しい発見があるかもしれない。